メール敬語で日本人がやりがちな英語の間違い15選
日本語の「よろしくお願いします」「恐れ入りますが」といった敬語表現は、英語にそのまま置き換えようとすると不自然な文になりがちです。英語の丁寧さは「謙遜する」のではなく「相手の選択肢を残す」ことで作られます。この違いを意識しながら、よくある間違いを見ていきます。
依頼・お願いの表現で起きる間違い
1. 命令口調になってしまう依頼
誤:Please do it by tomorrow.
解説:Please を付ければ丁寧になると思いがちですが、Please + 命令文はあくまで「指示」の形です。日本語の「明日までにお願いします」ほど柔らかくは響きません。部下への業務指示ならともかく、取引先や目上の相手には強すぎます。
正:Could you please have it done by tomorrow?
(明日までに仕上げていただけますでしょうか。)
2. I want you to… で依頼する
誤:I want you to send me the file today.
解説:want you to は「あなたに〜してほしい」という自分の欲求をそのまま伝える表現で、親しい間柄か上司が部下に言う場合に使われます。ビジネスメールで初対面に近い相手に使うと、かなり直接的で高圧的に聞こえます。
正:Could you send me the file today, if possible?
(可能であれば、本日中にファイルをお送りいただけますか。)
3. 依頼の前に感謝を述べてしまう
誤:Thank you for your cooperation. Please send me the data by Friday.
解説:日本語では「よろしくお願いします」を依頼の前後どちらにも置けますが、英語で Thank you for your cooperation は「すでに協力してもらった」ことへのお礼として使われる表現です。まだ頼んでもいないのに先にお礼を言うと、相手は「断れない空気」を感じてしまいます。
正:Could you send me the data by Friday? I would appreciate it if you could.
(金曜日までにデータをお送りいただけますか。ご協力いただけるとありがたいです。)
4. 「〜していただけますでしょうか」を直訳して過剰敬語にする
誤:Could you kindly please possibly send me the report?
解説:日本語の「〜していただけますでしょうか」の丁寧さを足し算で表現しようとして、kindly、please、possibly を全部詰め込んでしまうケースです。英語の丁寧さは語数ではなく構文で決まるため、丁寧語を重ねるとかえって不自然で、慇懃無礼にも聞こえます。
正:Could you kindly send me the report?
(恐れ入りますが、報告書をお送りいただけますか。)
5. 「お願いする」をそのまま ask a favor と訳す
誤:I would like to ask a favor of you about the schedule.
解説:ask a favor は間違いではありませんが、「大きな頼み事」をするときのやや重い表現です。日常的な業務連絡で使うと、何か特別な頼み事をされるのかと身構えさせてしまいます。
正:I have a quick question about the schedule.
(スケジュールについて少しお伺いしたいことがあります。)
お詫び・感謝の表現で起きる間違い
6. sorry を謝罪のたびに重ねすぎる
誤:I am so sorry, I am really sorry for the delay, I am sorry again.
解説:日本語では「申し訳ございません」を繰り返すことで誠意を示す発想がありますが、英語で sorry を連発すると、かえって軽く響いたり、動揺している印象を与えたりします。一度丁寧に謝り、その後は対応策を述べる方が信頼されます。
正:I apologize for the delay. I will make sure it does not happen again.
(遅れにつきましておわび申し上げます。今後このようなことがないよう注意いたします。)
7. 謝罪だけで終わり、今後の対応を書かない
誤:I’m sorry for the late reply.
解説:これだけで文を終えると、日本語では「遅くなりすみません」と言った後に用件が続くのが普通なのに対し、英語ではそっけない印象になります。謝罪は「理由」や「今後どうするか」とセットで書くのが自然です。
正:I’m sorry for the late reply. I was out of the office until yesterday, but I have now reviewed your message.
(返信が遅くなり申し訳ございません。昨日まで不在にしておりましたが、確認いたしましたのでご連絡します。)
8. 謙遜のつもりで自分の英語力を卑下する
誤:I am very sorry for my poor English.
解説:日本語の「拙い英語で恐縮ですが」という謙遜表現をそのまま訳したものですが、英語のビジネス文化では自分の能力を必要以上に卑下することは謙虚さではなく、自信のなさや不要な自己弁護と受け取られがちです。
正:Please let me know if anything is unclear.
(分かりにくい点がございましたらお知らせください。)
9. Thank you in advance を使いすぎる
誤:Please revise the contract by Monday. Thank you in advance.
解説:Thank you in advance は「あらかじめお礼を言っておきます」という意味で、相手の承諾を前提にしているため、場合によっては「断る余地を与えない」印象を与えます。特に相手にとって負担の大きい依頼では、押しつけがましく感じられることがあります。
正:Please revise the contract by Monday, if possible. I would really appreciate your help.
(可能であれば月曜日までにご修正いただけますと幸いです。ご協力いただけるとありがたいです。)
10. 謝罪の代わりにクッション言葉を使いすぎる
誤:I’m sorry to bother you, but I’m sorry to ask, but could you check this?
解説:日本語の「お忙しいところ恐縮ですが」を文の中で何度も繰り返す発想を持ち込むと、sorry が多すぎて不自然な上に、本題がどこにあるのか分かりにくくなります。クッション言葉は一文に一つで十分です。
正:I’m sorry to bother you, but could you check this when you have a moment?
(お忙しいところ恐縮ですが、お手すきの際にご確認いただけますでしょうか。)
呼びかけ・結びの表現で起きる間違い
11. 敬称を二重に使ってしまう
誤:Dear Mr. Tanaka-san,
解説:Mr. と -san はどちらも「様」にあたる敬称なので、両方使うと二重敬語になります。日本語の感覚で「よりかしこまって見えるように」と足してしまいがちですが、英語では不自然な誤りとして目立ちます。
正:Dear Mr. Tanaka, または Dear Tanaka-san,
(田中様へ)
12. Best regards と Sincerely のフォーマル度を混同する
誤:初めてメールを送る取引先に対して Best wishes, を使う。
解説:Best wishes は友人や親しい同僚向けの結びで、ビジネスの初対面の相手には軽すぎます。日本語の「よろしくお願いいたします」は状況を問わず使える便利な表現ですが、英語の結びの言葉はフォーマル度によって使い分けが必要です。
正:Sincerely, または Best regards,
(敬具)
フォーマルな初回連絡には Sincerely、やり取りを重ねた相手には Best regards が目安です。
13. note を命令形で使って文法を誤る
誤:Please be noted that the meeting has been moved to 3 p.m.
解説:日本語の「ご承知おきください」を直訳しようとして受け身にしてしまう誤りです。note は「あなたが気づく」という意味なので、be noted という受け身の形は文法的に成立しません。
正:Please note that the meeting has been moved to 3 p.m.
(会議が午後3時に変更になりましたのでご承知おきください。)
14. I think so で目上の人への返答を済ませる
誤:上司からの確認に対して I think so.
解説:I think so は便利な相づちですが、単独で使うとぶっきらぎしく、根拠を示さない印象を与えます。日本語の「そう思います」はそのまま丁寧語になりますが、英語では内容を添えることで丁寧さが生まれます。
正:I believe that is correct based on the data we received.
(受け取ったデータから見て、その通りだと思います。)
15. 添付ファイルの確認依頼が唐突に始まる
誤:Please check the attached file.
解説:文法的な誤りはありませんが、これだけで文を始めると素っ気なく、命令のように響きます。メールの冒頭で状況を一言添えるだけで印象が大きく変わります。
正:I have attached the revised proposal for your review. Please let me know if you have any questions.
(修正版の提案書を添付いたしました。ご不明点がございましたらお知らせください。)
敬語表現を英語で身につけるために意識したいこと
ここまでの例に共通しているのは、日本語の敬語が「言葉を丁寧にする、謙遜する、繰り返す」ことで成り立つのに対し、英語の丁寧さは「相手に選択肢を残す、断定を避ける、具体的な行動を示す」ことで成り立つという違いです。Could you や if possible、I would appreciate it といった表現は、相手が断りやすい形を作ることで丁寧さを生んでいます。
誤りを一つずつ直すよりも、まずは Could you や I was wondering if、if it’s not too much trouble といった定番のクッション表現をいくつか覚え、依頼・謝罪・結びのそれぞれの場面で使い回せるようにしておくと、実際のメール作成で迷う場面が減っていきます。迷ったときは、日本語の敬語をそのまま訳すのではなく、「相手に何を選ばせているか」を基準に文を組み立て直してみてください。